【離乳栄養法-6-③食物アレルギー】令和の時代~科学の進歩は赤ちゃんの食に関わる健康問題の解決に貢献しているか

令和時代~(2019~)

食物アレルギーとは食物により免疫反応を介して生体に不利益(マイナス)な症状が引き起こされる現象をいう。

不利益(マイナス)な症状は、食後2時間以内に起きて、30分~半日程度でおさまるのが一般的である。しかし重症になるとショック症状に陥る場合がある。

侵入経路は経皮膚(触れる)・経気道(吸い込む)経口(食べる)である。

誘発症状は、「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」1によれば、皮膚症状が 85.2%(5,182 例)、呼吸器症状が36.4%(2,216 例)、消化器症状が 30.8%(1,870例)、粘膜症状が 30.5%(1,853 例)、ショック症状が 10.9%(660 例)であった。

IgE依存性食物アレルギーの分類は以下である(表1 )。

食物アレルギーの分類

【引用文献:食物アレルギーの診療の手引き20202

即時型アレルギーは乳児期に多いが幼児期、学童期と成長に伴い減少する。

年齢分布

令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(令和4年3月消費者庁)

原因物質は、鶏卵、牛乳、木の実、小麦、落花生、魚卵の順で多い。

即時型食物アレルギーの原因物質

令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(令和4年3月 消費者庁)

木の実の内訳をみるとクルミやカシューナッツが原因物質としては多い。

木の実類内訳

令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(令和4年3月 消費者庁)

年齢群別原因食物(粗集計)

注釈:各年齢群で5%以上の頻度の原因食物を示した。また、小計は各年齢群で表記されている原因食物の頻度の集計である。 原因食物の頻度(%)は小数第2位を四捨五入したものであるため、その和は小計と差異を生じる。

令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(令和4年3月 消費者庁)

ところで食物アレルギーを予防するためには、まずは皮膚に炎症を起こさないことが大切である。

人間には、口から入れた場合には食べ物を異物と認識せず体内に取り入れる消化吸収能力が備わっている。

しかし皮膚が炎症し皮膚のバリア機能が破壊されている状態で、空気中に浮遊している食物の粉塵等が荒れた皮膚から侵入するとこれを異物とみなし、抗体をつくり排除しようとする。

これが食物アレルギーを引き起こすのである。

つまり食物が体の中に入る順序が重要である。

つまり口から先に入るか、皮膚から先に入るかが鍵となる。

アレルギーの原因となる食物の成分が生まれて初めて口から先に入ると腸の中で免疫細胞の攻撃を抑える細胞もつくられるため食物アレルギーは発症しにくい。
しかし口より先に炎症した皮膚から先に食物成分が入ると、攻撃を抑える成分が作られないため食物アレルギーを発症しやすいのである3

食物アレルギーのリスクを下げるには、保湿剤等で皮膚炎にならないように予防する、もし炎症が起きたらすばやく薬を塗って早く皮膚のバリアを回復させる。そのうえで離乳食は遅らせることなく適切な時期に少しずつ与えていくことである。またアレルギー素因を持つ乳児は離乳食を早めに与えた方が効果的である4

以上から、食物アレルギー予防のためには皮膚炎の予防と共に現在の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」における離乳食の進め方よりは、改定「離乳の基本」)5の進め方を採用して離乳初期から米粥ばかりでなく、卵、豆腐、乳製品、魚、肉などの食品も与えるようにするとよいのではないだろうか。

【引用・参考文献】

1)消費者庁、2022、「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」、https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf(2024年6月4日アクセス)。

2)伊藤浩明、今井孝成、大嶋勇成、大矢幸弘、近藤康人、藤澤隆夫、山田佳之、鈴木慎太郎、中村陽一、福富友馬、山口正雄、大久保公裕、相原道子、矢上晶子、2020、「食物アレルギーの診療の手引き2020」代表者海老澤元宏

https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/(2024年6月4日アクセス)

3)国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業 重症食物アレルギー患者への管理および治療の安全性向上に関する研究、研究開発 代表者 海老澤 元宏 国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター。

4)森川恵美、成田雅美、2021「食物アレルギーハイリスク児の離乳食の進め方」『チャイルドヘルス』、第24巻、2号 17-19。

5)小池達夫、清水俊明、南部春生、東明正、水野清子、柳下文恵、山城雄一郎、2002、「改定「離乳の基本」―<理論編>」監修山城雄一郎、母子衛生研究会編集、母子保健授業団発行.6-9

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