フェイク情報から自己防衛

世の中には,都市伝説とかガセネタとか,虚偽情報やら嘘記事やら,眉唾物にデマにフェイク,そういったものが満ち溢れている。
権威あるとされる新聞の記事や行政の広報にしても「なんだか腑に落ちないな」ってものがある。
そのようなちょっと信じがたい記事や言説に出会ったとき,どうすれば良いか。
私は,記事や言説の信頼度を判断するのに,フランシス・ベーコンが提示した4つのイドラの戒めに照らしている。

(1)市場のイドラ
巷で言われていること;皆が言っていることだから,ということで信じてしまう。

(2)劇場のイドラ
偉い人が言っていること;権威ある機関の発表を鵜呑みにしてしまう。

(3)洞窟のイドラ
個人の狭い経験のみで物事を結論付けてしまう;ある1つの体験を以て一般的事実としてしまう。

(4)種族のイドラ
人間ゆえに信じたいものを信じてしまう。「正義は勝つ!」とかもこれに含まれる。

フランシス・ベーコン(1561-1626)は,イングランドの哲学者・法律家・政治家。
その著書”Novum Organum”(新オルガノン)は1603年出版で,ここに4つのイドラが述べられている。

インターネット上に出回る記事や,いわゆる「ニュース」は,4つのイドラのいずれかにひっかかることが多い。
ニュース等の多くは,インターネット上の情報を探してきて,それを再編集・再解釈して再生産した情報である。
軽薄な記者が無意識にフェイク・ニュースを生産してしまうこともあるだろうが,老練なデマゴーグが意図的かつ組織的にガセ情報をばら撒くこともあるだろう。
新型コロナに関する各種報道;ロシア・ウクライナ関連の情報;エネルギー・環境関連の言説;芸能人男女の愛憎劇;飲食店の評判記事,などなど。
少しでも「むむむ?」と思ったら,4つのイドラに照らしてみることをお勧めします。

仕事の場面で,経験者の言うことに疑問を感じることがあるだろう。
でも,経験者がおかしいことを言うのは当然だ。
なにせ洞窟のイドラなのだから。
経験者が書いたビジネス書にも,「むむむ?」の箇所がある。

「おかしいだろう!神も仏もないのか!」と世の不条理を嘆いても仕方ない。
正義が勝つと考えたいのは,種族のイドラなのだ。
大本営発表を信じて東亜新秩序を大義に戦っていた吾らの父祖は,原爆を落とされ御聖断が下されるまで勝利を疑っていなかった。

人間が生きて行く為に必要な情報も,個々人が情報を評価・整理したうえで解釈しないと,自らの損になる。
そればかりか,価値のない情報を無批判なまま再生産・拡散すれば,社会に損害を与えることになる。
情報による自分と社会の損害を防ぐ簡単なツールとして,4つのイドラをお勧めしたいのです。

なお,Novum Organumを原文で読む必要はないと思う。
私も日本語訳の文庫版で読んだ。
オリジナルはラテン語だそうだ。
ラテン語なぞ,キリスト教の僧侶か専門の先生でもなければ読めまい。

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