環境ビジネスの価値創出構造

産廃処理の価値創出構造

さて,ここからSDLを用いて,産業廃棄物処理の価値創出構造を調べて行きます。
上の図は,いきなり結論です。
酒を呑むことの価値創出構造を応用すれば,これも簡単に理解できると思いますが,産業廃棄物の場合は環境という要素が入るので,ちょっと複雑になります。
ですので,ここから一つずつ図解して行きます。

まず,廃棄物があります。これを処理しなければなりません。
これだけでは,廃棄物処理は始まりません。
役者を揃えなければ。
廃棄物を処理する役者は,だれでしょうか。
・・・ 事業者つまり,廃棄物を発生する人です。
・・・ 産廃処理業者とは,他人から廃棄物処理を請け負う専門業者です。

役者は揃いました。
これから処理が始まります。
・・・と言いたいところですが,まだこれだけでは処理は始まりません。
これら役者が,資源(リソース)を出し合います。
処理業者が提供するリソースは,技術・機材・労働などです。
事業者が提供する資源は,資金です。
これらのリソースを使って,廃棄物を処理します。

廃棄物とは,無価値のモノです。
それどころか,お金などリソースを投じて適正に処理しなければ様々な害を発生するので,マイナス価値のものと言えます。
では,マイナス価値の廃棄物を処理することによって,創り出される価値とはどんなものでしょうか。

美的価値の向上。
廃棄物があればその場所は美しくないけれど,廃棄物が除去されれば美しくなります。
また,現在の廃棄物処理施設は,地元に迷惑を掛けないように,かなりの資金を投入して美的な面を整えています。
生活環境・自然環境の保全と,公衆衛生の向上。
現在の廃棄物処理施設は,環境を良くして清潔にすることが求められています。
そのために莫大な費用を掛けています。
空間の創出。
廃棄物を除去すれば,そこに空間が生まれますね。
法的責任からの解放。
廃棄物を処理しないまま放置していたり,法律の規定する以上の量を貯めると,処罰の対象になります。
そして,利潤です。
このように創り出された価値は,プレイヤー(役者)の間で分配します。

空間の創出と法的責任からの解放は,事業者の取り分です。
そして,利潤は処理業者の取り分となります。
では,美的価値の向上;生活環境・自然環境の保全;公衆衛生の向上は誰に分配されるのでしょうか???

それらは,処理施設の地元コミュニティの取り分です。
でも,おかしいと思いませんか。
処理業者も事業者も,それぞれがリソースを提供して,その見返りに創出価値の分配を受けますが,地元コミュニティだけ何もリソース提供していません。

いえいえ,実は地元コミュニティーも投資,つまりリソース提供しているのです。
受苦です。
本音では来てほしくない施設を我慢して受け入れること,これを受益の反対語である「受苦」といいます。
受苦というリソースを提供して,その見返りに価値の分配を受けているのです。

もうひとつ,資源の回復の分配先が決まりませんね。
廃棄物から再利用できる資源を回収することで,誰が利益を受けるのでしょうか。
処理業者でも事業者でもない。処理施設の地元コミュニティでもない。
地球上の人類全体が受益者,つまり広い意味での地元コミュニティが地球環境なのですね。
このページの一番上の図になります。

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