組織人のパワーとは

1       問題提起

人は組織の中で,それぞれの役割があって,それぞれが役割を果たすことで組織が機能している。でも,それぞれの人の仕事ぶりは様々で,皆が一律に100%役割を果たしている訳ではない。同じ平社員でも,仕事ができる者と,どうにも使えない者がいる。一つの会社に居る複数の課長でも,ある課長は地位相応の仕事をやり遂げるが,半端な仕事しかしない課長もいる。社長にしても,カリスマ性を以て人と組織を引っ張って行く社長がいる一方で,高学歴を威張っても社員の誰も付いて来ず,会社は倒産まっしぐらという社長もいる。

組織の構成員の「組織を統率して成果を上げるパワー」を「組織人のパワー」と言うことにしよう。組織人のパワーの大きい小さいは,どこから生じるのだろうか。あるいは,組織人のパワー差とは何なのだろうか。

2       要点

結論から言おう。まず,組織人のパワーの構成要素は,(i)仕事能力;(ii)権威(地位);(iii)人間的魅力の3つである。そして,組織人のパワーの大小は,この3要素の合計で決まるのだ。つまり,
【組織人のパワー】=【仕事能力】+【権威(地位)】+【人間的魅力】
この稿で言いたいことはこれだけだ。

自分の身の回りの人,上司やら部下やら同僚やらを,この3要素を当てはめて見てみると面白い。この社員は,仕事はできるのにどうして評価が低いのだろうとか。この課長は,能力はあるのになぜ成果が上がらないのかとか。こ奴,様子は冴えないけれど,いつも余裕で仕事をやっつけちゃうんだよなとか。

組織の中で人々は,それぞれが様々なスタイルとペースで仕事をして「組織人のパワー」を発揮しているのだが,実際の組織人を分析したり評価したりするには,まず3要素にあてはめて見ることだ。ある者は,能力はあるのに人間的魅力がないために,人望が薄くてパワーが発揮できないのかも知れない。また,組織内の権力闘争に精を出す者があるが,これは地位(権威)を得るための努力だ。まじめに仕事に取り組むことで仕事能力が高まると思われがちだが,仕事能力が高まっただけで他の2要素が伴わなければパワーが高まることはない。

3       組織とは

なお,ここで言う組織とは,なにも会社に限ったことではない。国家も組織だし,家庭だってそうだ。会社で最も大きなパワーを持つのは,普通は社長だ。国家の場合は,大統領か首相か,または,皇帝とか国王とか。家庭の場合は誰だろうか。お父さん?お母さん?大部分のケースでは,お母さんかな。

4       権威とは

権威(地位)とは,公式的なポジションのことだ。社長,取締役,部長,課長とか。皇帝,国王,村長,市長,大臣,国会議員,大統領など。もちろん家庭における,お父さん,お母さん,跡取り息子,なんてのもそれだ。出世競争,権力闘争,クーデターなどは,この公式的ポジションを得て,ヨリ大きなパワーを獲得しようという行動だが,公式的ポジションだけで他の2要素が伴わなければ,パワーは付いてこない。そこが分かっていない者が権力闘争に参加すると,組織にとっては混乱が,その者にとっては屈辱が齎されるだけだ。とは言っても,権威は組織人のパワーを構成する重要な要素ではある。

5       仕事能力とは

仕事能力とは,組織人の役割を遂行するのに必要な技術である。会計担当者であれば,計算をして帳簿を付け金銭の出し入れをする仕事の能力。製造部門の労働者であれば,図面を見て機械や道具を操作し品物を作る仕事の能力。管理職の仕事は,組織の目的に沿って労働者を指揮して働かせることで,それを遂行する技術が仕事能力だ。パワーの3構成要素のうちの最も重要なもので,これさえあれば,組織人のパワーは発揮できると,筆者は考えている。ただし,仕事能力しか持っていない者を,周囲の人間が支えてやる必要はある。

仕事能力はあって役職が伴っていない者が「不遇をかこつている」とか「飼い殺しにされている」などと評されることがあるが,それは見立て違いであることがある。多くの場合は,その者に足りていない権威や人間的魅力を組織が補って,その者を支えているのである。

6       人間的魅力とは

人間的魅力は,いちばん説明が難しいパワー要素である。それは「生まれと育ち」によって形成された,その人物のキャラクターであって,本人の意志とか努力とかでコントロールできるものではない。生まれとか育ちとかいった,本人の努力でどうにもできないことで人を差別するのは良くない。ところが,差別するのではないが,そういう能力に差があることはどうしようもない事実だ。ただし,いわゆる恵まれた出自の者が,その人間的魅力も高いとは限らない。

「カリスマ」という言葉がある。もともとがキリスト教神学の用語らしいが,神からの天与の賜物のことだそうだ。日本語にすると「教祖的」とかになるらしい。組織人としての人間的魅力を一言でまとめれば,まさに「カリスマ性」だ。天性のものでない,本人が努力したり経験や苦労を重ねたりすることで身に付けた人間的魅力らしきものもあるが,それは人間的魅力というよりも,仕事能力の一部と考えるべきものだ。見分けることは難しいが,天然物と養殖物は,何かが違うのである。

7       最後に

以上のことをベースにして組織人を分析してみよう。自分が勤務する会社の人々,ニュースに出てくる国内外の政治家,自分の家族などを(i)~(iii)の分析枠組みで観察して頂きたい。その人のパワーの本質が見えてくるはずだし,組織内での人々の力関係の正体も見える。

なお,以上で述べた組織人のパワーの理論は,筆者のオリジナルではない。詳しいことは憶えていないが,何十年も前に,どこかで読んだか聞いたかのものだ。若い頃に知った理論だが,しばらくは忘れていた。この齢になって,身の回りの組織と組織人のことが気になり,この理論の存在を思い出し,記憶の中から引っ張り出した。実際の組織の分析にこの理論を適用して,現象がスッキリと明らかになることに,興奮を覚えているところだ。

関連する文献がないかと図書館などを少し捜してみたが,手掛かりは掴めていない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました